この前、かおりんこと岡本かおり氏と、聴覚障害者を初めて雇う企業さんへ「聞こえる人・聞こえない人が共に働くための相互理解研修」をやろうということで、打ち合わせをしていました。
私たちSilent Voiceは全スタッフの12名のうち、半分が聴者もう半分が聴覚障害者で、いつも共に働く上では相互理解を大事にしています。
研修の中でも聴者と聴覚障害者が相互に理解することこそが大切だと思い、資料作りをしていたのですが、世の中にある情報の中で下図のようなことが起きている気がしたのです。
上図の左の情報が多いのは、まぁ一番は聴者の人口のほうが多いからだと思うけど
同時に、社会で障害者理解ばかりを推し進めている現状をよく表している…!とも思います。
でも、聴覚障害者の両親や仲間と暮らしたり働いたりしている自分は分かる。
人間誰しも、相互に理解し合って良い関係が作れるんじゃないの…?!
片方だけが努力しても疲れて終わっちゃう。と。
そんなことで、かおりんとSNSで「聴覚障害者(ろう者・難聴者)が聴者に抱く違和感」
いわゆる「ここがヘンだよ聞こえる人!」という意見を募集してみました。
その結果…
【生の意見を求む!】
聴者が聴覚障害者に違和感を持つこと(例えば、ストレートな表現が多いとか)をまとめてるんだけど、その逆、
聴覚障害者が聴者に違和感持つこと(例えば、挨拶のときに目を見ないとか)の情報はめっちゃ少ない!!!
なので、思い当たるコトがあればぜひ教えてください!
— 尾中 友哉 (@TomoyaOnaka) 2019年2月5日
けっこう色んな意見が集まりました!!
聴覚障害者と言っても「難聴者」「ろう者」難聴者の中でも「片耳難聴」や難聴の程度の重い軽いなどがありまして、それぞれの視点から意見を頂きました。
ご協力いただいた方、有難うございます!!
僕に関してはこんなにリツイートしてもらったのは初めてです。3日ぐらいスマホ見てソワソワしてました。いい記念になりました。
それぞれの意見を類似のものや意味が繋がっているものを僕なりにざっとまとめてみました。
では、意見の多かったものから紹介します。
聴者にとって、声ってそんなにすごいの?
声中心のコミュニケーションでは声のトーン、高低、テンポ、リズム、音質(滑らか、ハスキーなど)が非言語情報として、かなり重要です。電話している相手の顔を見たことなければ、声や言葉遣いだけで「上品な人だ」という印象を持ったりします。
これは手話や口話を日頃使っている人も同じ感覚はあるはず。前後の言葉や文脈から同音異義語を使い分けていると思います。中には、発音のイントネーションで判断したりもあると思います。
この辺は確かに…と思いましたw
よくクレジットカードの本人確認とか家を借りる際の手続きとか「電話じゃないと無理」みたいなのありますもんね。実際には、電話で生年月日や住所などを聞かれて本人確認みたいなことするのですが、よく考えれば「なりすまし」ができそうな方法ですよね。
確かに、声ってそんなにすごかったっけ?
聴者さん、表情を一体どこに置いてきたんだい??
この辺は、聴者文化とろう文化の顕著な違いだと感じました。手話で話す場合は基本フェイス・トゥ・フェイスですから「うれしい」という手話をするときは嬉しそうなという顔を確認できないと意味が正しく伝わらなかったりします。なので、手話話者は表情が豊かな人が多いです。
聴者的には表情以外に、声に感情込めたりとかはあるんですが、無表情で棒読みのような喋り方だと「伝わらない感覚」があるのは同じです。
表情の重要度や温度感は確かに違いがあります。
だから、こういう違和感も出てきますね。すごい分かる。聴者が「うんうん」とか声で相槌を打っていたとしても「頷き」や「理解した」というような動きや表情がないと伝わりませんね。
「うんうん」と言いながら、頷かないのも結構難しいけどw
そしたら↑みたいな印象にもなる、ということですね。うん、わかる。
まぁでも、話すときに表情があるとかの重要性はそこらじゅうで語られていますので、社会に豊かなコミュニケーションが増えると良いなぁ。
聴者って、聴覚障害者イコール手話だと思ってるよね?
試聴で大きな補聴器をしていたときのこと。話しかけると、「私は手話できません。ごめんなさい!」と何人かに逃げられたので。
逃げたwwwまじですか。おそらく、その人にとっては「未知との遭遇」だったのでしょう。気持ち分からないでもないけど、同じ人間だし普通にしたいですね。
確かに、僕も手話話者ですけど聞こえますしね。通訳者もそうですし。
逆に、聴覚障害者や難聴者という立場の方で手話ができない(厳密にはコミュニケーション手段として手話を選択しない)人たちというのは、けっこういます。
正確な統計は存在しないようですが、ヤフー知恵袋でこの件の質問と回答がありました。
聴者がなんで「手話は、聞こえない人だけが話す言語だ」と思うかというと、言い換えれば「関西人は関西弁を話す」みたいな感覚だと思うんですよね。でも実際は、関西弁を話さない人もいるし、それは親が関東出身だったからかもしれないし、周囲の友だちが使わなかったからかもしれない。
慣れ親しんだコミュニケーションの方法というのは、自分の状態や環境によって、人それぞれ変わってきますよね。
聞こえない人も同じです。聴力の程度や家族環境、教育環境などで手話を使うかどうかと言うのは絶対ではありません。
でもつい「インド人はカレーが好きだ!」と思うし「ドイツ人はビールが好きだ!」と思いますよね。そのほうが楽だからです。でも、そうじゃない人もいるとか、そもそも一人ひとり違って良いんだという考えを持てれば、しっかり相手のことを理解することができそうです。
こんな記事書いてますけど聴者の方でも表情豊かな方、たくさんいますもんね!
(これに驚く人は意外にも多い)
あと、これね。僕も日ごろ人と話していて「手話は世界共通じゃないですよ!」と言うと驚かれることが多いです。これは全く、各国に異なった言語があるのと同じ理由ですね。文化が言語(言葉)のベースであり、文化が違えば言葉も違うわけですね!
聴者、ちょっと失礼じゃね?マナーの件
これはうちの職場でもよく発生しますww
聴者が帰るときに声だけで「おつかれでーす」といった場合、聞こえない人は反応できません。
今は特に冬場なんでマスクしてて口元が見えなかったりすると、帰るときに何も言わず静かに立ち去った人→失礼な人みたいになってしまいます。
上記のケースも同じようなことが起きているのかもと思いました。相手は挨拶の声だけは出していたり、でも口元が動いてなかったということだったら、手話のできない聴者としては「手話できないし、どう挨拶したら良いんだろう」という困惑で、一瞬のすれ違い挨拶のタイミングに何もできなかったのではないでしょうか?「顔を見て会釈だけでもいい」ということが自然に伝わるといいですね。
この時期はマスクだらけなので、口が読めないのでマスクを外していただけると助かります…と断りを入れなければならず、感染や乾燥などを気にして
いる相手に申し訳ない気分になります。
いやぁ、マスク問題でかいわ!!マスクに対する考え方のこの隔たりは、ほんとに大きいですね!
マスクで口元が隠れてしまうと口の形が見れなかったり、表情がわからないので聞こえない人にとっては「見る情報」が格段に減ってコミュニケーションがしにくいわけですが、、、
マスクも付けている人にとってすれば必要があって付けていますからね。相手に合わせて外すかというのは、依頼の仕方や、相手との関係性や、それこそ、このマスクを外すことで聞こえない人がコミュニケーションが楽になるということを理解してもらえているかというのは大きいですよね。
聞こえるほうが良いでしょ問題
これは片耳難聴の方からですね。確かに言葉の裏を返せば「片方は聞こえなくて悪い」と言ってるわけですからね。
いやぁ、この辺は「決めつけられる」ことのシンドイところですね。しかも「悪い」と決めつけられてしまうと、一気に心のシャッターが下りてしまう気持ちはわかります。
あんまり、一括りにして語るのは良くないとは思いつつも、中途失聴者(ある時期から聞こえなくなった人)は、失聴直後はやはりそれなりにショックがあり「聞こえるほうが良かった」と思う気持ちもあると思うんです。それはそれで、その気持ちが尊重されるべきこともあるでしょう。
でも、聞こえない人の誰もが「聞こえるほうが良かった」と思っているかというとそうではないです。僕の母はカフェの経営者であり重度難聴です(母に興味のある方はこの記事を)が「聞こえない」ということをほとんど意識していないと言ってました。「聞こえるようになること」が幸せになる手段でもないと、語ってくれました。「聞こえるようになる」以外に「聞こえない自分」が幸せになる手段がいっぱいあるということだと思います。
意見、多い!!!
一回この辺にして、この記事としてまとめようと思います。
ほんと、かおりんや僕の呼びかけにご意見をくださった方々、有難うございます。
ブログでは全てをご紹介はできませんでしたが、私たちの中で相互理解という両者の壁を壊すアプローチについての考え方を深めることができました。
最終的には、相互理解研修を下のスライド画像のようなメッセージを中心に据えてワークショップも交えながら研修を組み立てました。
障害者理解が必要!!という正論は広がっています。広がるに至ったのは、障害者差別や聴者有利・聴覚障害者不利な社会みたいな時代背景もあって感情的なものもあったと思います。
でもどこか、両親が聞こえなかった自分としては「障害者理解」って言われると、聞こえる側が聞こえない側を理解しろ!それだけ大事!みたいに聞こえてバランスが悪いなと感じていました。(そんな感じで親に接されていたら、家出してたかもです)
既に社会全体の雰囲気としては、聞こえる聞こえないが有利不利にならないようにお互いに協力する時代になってきていると思います。
だからこそ、相互理解。正論を広げるんじゃなくて、正しい結果がいっぱいもたらされるように。具体策をもって示唆的な活動ができればと考えています。
「聞こえる聞こえないの違いを活かす」
これを実現するために、Silent Voiceでは日々ノウハウを蓄積しています。
それを、
❑聞こえる人・聞こえない人が共に働くための相互理解研修
❑日報サポート
❑大阪や東京でクローズドな勉強会
このような形で、社外の方とも共有しながら
私たちのビジョンでもある「聴覚障害者の活躍の場を増やす」ことにチャレンジしています。
これらのアプローチで、聴者と聴覚障害者の職場の中で
障害者雇用を、組織風土改革などに生かしていく成果が上がっています。
会議でコミュニケーション配慮が増加 / 無断欠勤の減少 / 聴覚障害者当事者による社内相談窓口の設置 / 業績評価の見直しの取り組み / 工場内の見える化の促進 / 障害者雇用の採用基準の見直し / 会社独自の「サイン」構築 / 人事と上司が聴覚障害者社員の課題感を把握できるようになった / 上司・同僚(聴者)が聴覚障害者社員へ教育的指導をできるようになった / 聴覚障害者社員の積極性の向上(周囲への依頼がうまくなった)/ チーム内の役割の明確化 / チームが顔を見て話すようになった / チームの雰囲気が明るくなった など
以下のような立場で、共感いただいた方は
お気軽に、ご相談やお問い合わせください。
- 障害者人事担当者
- ろう者、難聴者と聴者が働く職場の方
- ダイバシティ推進担当者
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